研究概要 |
近年バイオテクノロジー(発生工学)が哺乳動物卵子にも利用され、めざましい技術開発がなされている。1980年我が研究室でマウス卵子をラット子宮内に着床させることに世界で初めて成功した。その後、マウス卵子をラット卵管内に移植した場合も着床しうることを確認し、その後の発育について内分泌学的、免疫学的手法を用いて研究を進めてきた。しかし、着床以降の発育には効果はみられなかった。今回、バイオテクノロジーの手法を用いて、マウスおよびラット間の異種間融合胚を作成し、異種間移植を試み、着床ならびに着床以降の発育を観察することを目的に実験を行った。(1)マウス8細胞卵子の培養において1CR×1CR,1CR×C57BL/6,1CR×C3H/He,C57×BL/6×C3H/He,(C57BL/6×【CH_3】/He×1CRの5つの組み合わせで比較したところ、胚の発生は親の組み合わせによって異なること、また1CR×1CR,1CR×【C_3】H/Heの組み合わせが比較的良好であることが判明した。(2)マウスおよびラット卵子の培養において、BMO【C_2】液,BMO【C_3】液,修正BMO【C_2】液,DMEM液をもちいて胚の発生について比較検討を行った。その結果マウス卵子の培養にはBMO【C_3】液が95.6%と発生率が高く、次いでDMEM液であった。ラット卵子の培養にはDMEM液が85.7%と発生率が高く、次いでBMO【C_2】液であった。(3)マウスおよびラット卵子のキメラ胚の作成を行ったところ、マウスの同種キメラはBMO【C_3】液で融合胚87.0%、ラットの同種キメラはDMEM液で融合胚84.4%という好結果を得た。(4)マウス・ラット異種間キメラはDMEM液で融合胚84.4%作成しうることができた。(5)マウス・ラット異種間キメラ胚をラットの子宮に移植を行い、現在、着床の可能性について組識切片を作成中で、近々その結果が判明する。今後、螢光色素を用いることによって、異種間胚が着床時にどのような役割をなしているか究明でき、着床の機構がかなり判明すると思われる。
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