研究概要 |
1.ヤギ精巣精子の運動能に影響を及ぼす要因: ヤギ精巣精子は, 普通, その30〜40%が微弱な振動運動を示すに過ないが, カフェインを添加すると, 約90%が振動運動または旋回運動を行うようになった. さらに, カフェイン(25mM)とともに精奨, 精巣上体尾液や精管膨大部, 精のう腺, 前立腺の抽出液, 筋肉, 心臓, 腎臓, 副腎, 肝臓, 大脳の抽出液, あるいは卵黄などを添加すると, 前進運動を行う精子が出現した. これらの添加物のうち最高の前進運動誘起効果を示したものは精奨, であり, ついで精のう腺抽出液と精管膨大抽出液であった. 精巣精子が示す前進運動は, 精子の長軸に沿った頭部の回転を伴っており, この点では成熟精子と同じであったが, 前進速度は成熟精子にくらべて著しく低速であった. このような結果から, 精巣精子はすでに前進運動のための基本構造を具備することが示唆され, 処理条件のいかんによっては成熟精子と同等の活発な運動を誘起することも可能と考えられた. 2.ヤギ精巣精子における先体反応の誘起: 精巣精子をハムスターに抽出子宮内でプレインキュベートしたのち, 透明帯除去ハムスター卵子に媒精した結果, 15.5%(36/232)の卵子で明確な精子進入が認められた. また, 同様の試料をトリプルステイン簡便法で染色したところ, 18.2%の先体反応精子率が得られた. このような結果から, 精巣精子においても先体反応を誘起しうること, 精巣精子を用いて体外受精を行うことにより受精卵子を得る可能性のあることが示唆された. 3.以上のほか, 精巣上体通過に伴うヤギ精子の運動能, 形態, 受精能の変化につき検討し, さらに精巣精子の体外保存や精巣網液中のステロイドホルモンの測定を試みるとともに, カテーテル装着手術後の精巣と精巣上体頭の組織変化についても検討した.
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