研究概要 |
鶏の摂食行動をコントロールする技術を開発するためには, 摂食調節の情報を統合する中枢機構の解明が必要と考え, 雄および雌鶏における視床下部外側核(空腹中枢)のニューロン活動を慢性多連微小電極法により調べた. その結果, 全てのニューロンが摂食行動と密接に関連した活動を示すことが認められた. 雄鶏においては, 摂食行動時にtonicに活動が高進するE型と, 探索行動時にphasicに活動が高進するI型とに, 半分ずつ分かれた. 前者のE型のニューロンは摂食行動の開始, 維持に関わっていると考えられる. また, そのtonicな活動の中にphasicな活動高進が認められ, 摂食動作とその関連によって細分類できた. これらは少なくとも, くちばし, 消化管, 視覚からの情報がE型ニューロンの活動を高進させていることを示しており, 摂食行動の促進のためにはこれらの感覚情報を強めることが有効と考えられた. 他の生理学的要因, 例えば満腹物質などの効果については今後の解明が必要である. 摂食行動時に活動が消失するI型のニューロンは, E型と隣接していると考えられ, また, 探索時に活動が高進することから, 摂食の開始に関与すると考えられた. 雄鶏におけるニューロン活動は1種類のみであり, 摂食行動時にはtonicな活動高進を示し, 探索行動時にはphasicな活動高進を示した. 即ち, 雄鶏での2種類のニューロン機能を合わせ持っていた. 行動学的に調べると, 雌鶏では探索と摂食とが密着しており, このことは同一ニューロンが2種類の行動に関わることを裏付けていた. なお, 摂食行動およびニューロン活動における性差の存在は, 雌雄間で摂食を制御する技術が違ってくる可能性を示唆している.
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