研究概要 |
めん羊において, 短鎖脂肪酸を静脈内投与すると膵外分泌が刺激されることが知られている. しかし, この作用が膵外分泌調節において生理的に役割を果たしているのか, その意義は何かと言った点は今なお不明である. 本研究は, 生理的条件下における短鎖脂肪酸と膵外分泌との関係を明らかにするために行ったものである. 1.短鎖脂肪酸の揮発性を利用してヘッドスペースガス分析法による血漿短鎖脂肪酸濃度測定法の検討を行った. その結果, 保温温度は70°C, 試料容量は500μlで高感度に検出できることを明らかにした. 2.採食開始2時間後の血中酢酸濃度は2458±149μmol/lであった. 3.酢酸Na(pH:7.4)を12.5, 25, 50および75μmol/kg・minの割合で静脈内に注入した. その結果, 注入期間中の酢酸濃度は何れの場合も採食後の値より低かったが, いずれの投与量においても膵外分泌反応は増加した. 4.酢酸, プロピオン酸, 酪酸, カプロン酸およびカプリル酸を静脈内投与することにより膵外分泌機能は刺激され, その反応は脂肪酸の炭素数の増加とともに大きくなった. 5.酢酸の静脈内注入下でCCK-8を投与したところ, CCK-8単独投与の場合より膵外分泌反応は小さかった. しかし, セクレチンの場合には単独投与の場合より増加した. 6.静脈内酪酸投与により膵外分泌が刺激されるが, この後に著しい抑制が起こる機序について検討した. 7.短鎖脂肪酸の膵液中への重炭酸イオン分泌効果について, CCK-8およびセクレチンの効果と比較したところ, セクレチン>CCK-8≒酪酸であった. 8.短鎖脂肪酸を第一胃内, 十二指腸内および静脈内に投与することにより, 異なった膵外分泌反応が得られた.
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