研究概要 |
昭和60年度科学研究費補助金を得てヒトおよび各種動物の糞便が変異原性を有し、またL.bulgaricus,S.thermophilus,S.lactis およびS.faecalisの単用もしくは併用により製造した発酵乳がAF2,4NQ0,Trp-P1といった直接変異原物質の変異原性を減弱させることを認めた。これらの事実に基づき本年度はAmes株TA98およびTA100から造成したストレプトマイシン耐性株をマーカー菌として下記の研究を行なった。」1.ヒトおよび各種動物糞エキスの変異原性に対する発酵乳の減弱効果 イヌ,ネコ,サル,ウサギ,ブタ,ヒトの新鮮糞より水抽水液を得た。これらの抽出液はいずれも変異原性を示した。これら糞便エキスの変異原性は上記乳酸菌単用によって製造した発酵乳により著しく減少することを認めた。 2.乳酸菌菌体による抗変異原性 ヒト腸管菌叢中代表的な腸球菌であるS.faecalisの洗浄菌体ならびに細胞壁によるAF2,MNNGならびに4NQ0に対する抗変異原性を調べた。その結果S.faecalis6株の洗浄菌体ならびに細胞壁に顕著な抗変異原性が認められた。さらに、イヌ,ネコの新鮮糞から調製した変異原性に示す水エキスに対してもS.faecalisの洗浄菌体ならびに細胞壁は抗変異原性を示すことが明らかとなった。これらの現象は乳酸菌の生菌のみがヒト腸管にあって優れた生理的効果を示すとする從来の認識を覆すもので、菌体の生死にかかわらず変異原性物質さらには癌原物質を細胞壁に吸着させ便として排泄させることを窺わせるもので本研究で得た結果の中で最も興味深く、また乳酸菌の生理的効果を知る上で重要な知見である。 3.今後の研究の展開 上記1および2で得た知見に基づき、発酵乳ならびに乳酸菌菌体(特に細胞壁)のinvivoでの研究をすすめたい。
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