研究概要 |
ウシの免疫学を理解することは感染症の予防・発病機序を知る上で極めて大切であるが、免疫担当細胞の主役であるT.Bリンパ球の測定法すら確立されていないのが現状である。我々は過去、数年間にウシT・Bリンパ球測定法について一応の成果を報告してきた。その後、マウスやヒトで成功しているようなモノクローナル抗体によるリンパ球測定法の確立をウシに応用すべく研究を進めてきた。以下現在までに得られた成果を箇条書とする。 1.T.Bリンパ球,単球,好中球,好塩基球の各々はかなりの精度で分離が可能となり、免疫原としての使用や作出モノクローナル抗体の特異性の検討に利用された。 2.成牛型白血病腫瘍由来樹立細胞を現在7株作出し、これをモノクローナル抗体作出の免疫原と作出抗体の特異性に利用した。 3.現在までに得られたモノクローナル抗体は(1)〜(6)の性状を有する。 (1)Bリンパ球の全てと単球を認識する抗体を2株 (2)Bリンパ球の約80%を認識する抗体を1株 (3)胸腺皮質部の幼若Tリンパ球を認識し、他の末梢Tリンパ球と無反応な抗体を1株 (4)Tリンパ球の全てと単球および好虫球を認識する抗体を1株 (5)TとBリンパ球の両方を種々な程度に認識する抗体を3株 (6)正常なBリンパ球とは無反応で成牛型白血病腫瘍細胞とのみ反応する抗体を2株 4.現在までの研究で、Bリンパ球の測定は可能となり確立されたと思う。一方、Tリンパ球のヘルパーやサイトトキシック細胞を特異的に検出しうる抗体の作出は今後に残された。
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