研究概要 |
サケ科魚類から分離された3種のヘルペスウイルス(H-83株, OMV(Oncorhynchus masou virus)およびHerpesvirus salmonis)の生物学的, 血清学的および遺伝学的解析を行なった. H-83株はヤマメおよびニジマス稚魚に致死的であったが, 1年魚には病原性を占めさず, 感染魚に低い中和抗体産生がみられ, 二次免疫応答も観察された. OMVはヤマメおよびギンザケ稚魚に致死的であり, ギンザケにおいては口腔内外に腫瘍を形成した. ウイルス分離成績から標的臓器は肝臓と推測された. 両ウイルスをin vitroで継代することにより, ヤマメ稚魚に対する病原生は低下した. 次に固相酵素抗体法および交差中和試験により, これらウイルスの血清学的関連性を検討した結果, H-83株とOMVは互いに類似するが, H.salmonisとは異なることが示唆された. ^3HラベルしたウイルスDNAをプローブとするDNA-DNAハイブリダイゼーション試験により, H-83株あるいはOMVのDNAとH.salmonis DNAとの相同性は低いことが示された. ウイルスDNAの制限酵素切断パターンは, H-83株とOMV DNAで互いに類似するが, H.salmonisのそれとは全く異なっていた. また, in vitroにおけるウイルス継代により, H-83株(33代継代)およびOMV(36代継代)のDNA切断断片のいくつかが消失あるいは新たに出現したが, H.salmonis(36代継代)のそれは変化しなかった. H-83株およびOMVは, 継代により明らかに病原性減弱の傾向を示した.
|