研究概要 |
本研究は犬の糖尿病に併発する疾患のうち血管病変を主体とし, 毛細血管瘤などを示す糖尿病性網膜症や糸球体硬化などを示す糖尿病性腎症に注目し, これらの発症機序ならびにその病態を明らかにすることを目的として以下の点について検討した. 1)インスリンの作用不足に関する検討:赤血球インスリンレセプターについて検討した結果, 糖尿病犬のレセプター数は健常犬のそれと比較して増加しており, インスリン治療により減少することが明らかとなった. このことから, 犬の赤血球インスリンレセプターについてもclownあるいはup regu-lationが認められ, 犬の糖尿病の病態を知る上でもインスリンレセプターの検討が必要であると考えられた. 2)病態に関する検討:自然発症糖尿病犬1例についてフォスフォスルフォンフタレイン(PSP)負荷試験を行って, 腎機能を検討した. すなわち, 6mgのPSP試薬を静脈内投与し, 投与後20分間の尿全量を回収して尿中のPSP濃度を測定した. PSPの排泄率は47%と健常犬と比較して差は認められなかった. 糖尿病性腎症の早期発見にはPSP負荷試験よりもさらに鋭敏な検査法を検討する必要があるものと考えられた. 3)病理組織学的検討:持続的な高血糖・尿糖を示した犬10例について検討し, 9例に膵壊死, 慢性膵炎, ラ氏島の萎縮・減数, あるいは島細胞の空胞化などを認めた. また全例に腎糸球体の結節性あるいはび慢性硬化病変, 毛細血管瘤などの血管病変ならびに滲出病変や観察された. 網膜については1例で検討したが, 毛細血管の拡張ならびに血管壁の肥厚が認められた.
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