研究概要 |
日本に分布するT.sergentiのワクチン開発を目的にsporozoite, schizontおよびmerozoiteの各発育原虫について形態的に検討を加え, merozoiteに対するモノクローナル抗体(Mab)を作製した. 1.Merozoite.感染赤血球から抽出したmerozoite抗原を用いて13種類のHabを作出した. ウェスタンブロッデイグによって6種の抗体は分子量32,000と23,000の抗原を認識していた. Mabがいずれも赤内型merozoiteの細胞膜と特異的に結合したことから, この抗原は原虫の限界膜上に存在し免疫反応に重要な役割を担っていると推察された. Mabは原虫寄生赤血球に観察されるHbの変性産物であるveilや原虫侵入時に形成されるbar-structureとも反応しなかった. また赤内型merozoiteのうち分裂中のものに限って, sporozoiteやschzontと同様に細胞侵入に関連する器管とされているrhoptry, micronameおよびinner membrane様の構造が確認された. これらのmerozoiteは感染力があり各発育期原虫と共通抗原を持つと考えられた. 2.Sporozoite, 媒介ダニが感染赤血球を吸血すると1〜2日で腸管内にgamelocyteが出現した. 若ダニおよび成ダニのいずれにおいても25°Cで飼育すると飽血30日以後2-3日間の吸血刺激により唾液腺内に成熟sporozoiteが形成された. sporozoiteの出現率は成ダニより若ダニが高く, 細胞内に侵入した1個のkineteは分裂しシンチチュウムとなり, これからbuddingにより数万個のsporozoiteが形成された. 現在sporozoiteに対するMabを作製中である. 3.Schizont, リンパ球内に形成されるschizontを検出するために15頭の牛にsporozoiteを接種したところ, 5頭にschijont様の発育ステージの原虫が観察された. schijontは感染リンパ球の組織培養により, invitroで増殖可能であり, ワクチン応用に最も期待されたステージであった. しかしTosergentiでは他のTheileria種と異なりこのステージの原虫の検出率はきわめて低く, 免疫学的検討に用るための十分な量の抗原が得られなかった.
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