研究概要 |
実験動物として5カ月令の雄ハムスターを用い, 16群に分けた(各群5匹):無処置の動物(C群), 5Gで5時間加速群(5G群), 無機塩類(MgSO_4, CaCl_2, Na_2, HPO_4)投与群(Mg群, Ca群, P群), 無機塩類投与後5Gで加速群(Mg・5G群, Ca・5G群, P・5G群), 自律神経薬(イソプロテレノール〔IP〕, プロプラノロール〔Pro〕, アドレナリン〔A〕, ノルアドレナリン〔NA〕)投与群(IP群, Pro群, A群, NA群), 自律神経薬投与後5Gで加速群(IP・5G群, Pro・5G群, A・5G群, NA・5G群). 摘出した上皮小体の電顕写真上で形態計測を行った. また, Zamboni固定, 抗ウシPTHウサギ抗体とProtein-A金法により超薄切片上で免疫組織化学反応を行った. さらに, C群, 5G群, A群, A・5G群, NA群, NA・5G群については別の個体を用いて上行大動脈からメタクリル樹脂を注入して上皮小体の血管鋳型を作製した. 《結果と考察》免疫組織化学による金粒子は分泌果粒と大型果粒とゴルジ空胞上に見られ, これらの小体がPTHを含むことがわかった. ゴルジ装置と粗面小胞体はCa群, Ca・5G群, Pro群で低下し, P群, P・5G群, Mg・5G群, IP群, IP・5G群, A群, A・5G群, NA群, NA・5G群において増加した. Pro・5G群はPro群より高値であった. 加重力環境下ではProによる上皮小体機能抑制が緩和され, IP, A, NAによる機能亢進が促進されると考えられる. Pは上皮小体機能を亢進させ, MgはCaと同様に上皮小体に抑制的な影響をおよぼすと言われるが, Mgは加重力環境下では特異な効果を与えることがうかがわれる. AやNAのような自律神経薬投与後の動物の上皮小体血管構築に著明な変化が見られなかったことは加重力環境下でのAやNAによる上皮小体機能亢進には血流を介さない, 直接的な影響があることを示唆する.
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