研究概要 |
申請者らは先にタラーゲンの試験管内線維形成の第一段階として仮定されている4Dずれ線状ポリマーが, コラーゲンをpH45に置くと特異的に形成されることを発見した. この状態で生ずる4Dずれ会合体(種々の重合度のものを含む)が, 生理的条件では天然型のD周期をもった細線維に組み込まれることを電顕的に確かめた. これは4Dずれ線状ポリマーが線維形成の中間体であるとする仮説の必要条件を満たしたことになる. さらにこれらの会合体を重合度により分離し, その役割を明らかにしょうとしたが, ゲル濾過による分離・調製は成功していない. コラーゲン自己集合の第一段階である2分子間の会合状態(二量体)を化学的に固定し, 分子束を形成させ, 電顕像からコラーゲン分子間のずれを同定する方法をとる際の, グルタルアルデヒド固定, 分子束(SLS)形成, ネガティブ染色, の各々の至適条件を定めた. 電顕的な同定には単量体分子束の横紋像と一次構造の関係が確立している必要があるが, L型コラーゲンの分子束のネガティブ染色像の疏水性アミノ酸の分布が対応することを見つけ, さらにこれをII型, III型コラーゲン分子束についても確かめた. 適当なコンピューターソフトができれば, 電顕像からコラーゲン分子の会合状態を推定することも可能であろう. pH4.5における4Dずれ結合には分子両端の非ヘッリックス部分(テロペプチド)が関与していることを確かめた. 試験管内コラーゲン線維形成の初期段階には, 4Dずれ分子間結合とそれ以降の反応が段階的に進行することを仮定したが, 初期にサンプリングして電顕観察すると, 細いフィラメントに加えてD周期の細線維が観察され, かなり初期からDずれ反応も平行しておこっていると思われ, 仮説, あるいは分析方法の再検討が必要である.
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