研究概要 |
1.単冠状動脈奇形の発生についての遺伝的実験では, 我々が見出した右冠状動脈口欠損奇形を有する系統マウス(ddv系に属する)を用いて交配実験を続けた. その結果, 両親とも同奇形である場合, 雄親のみ奇形である場合, 雌親のみ奇形である場合, 両親とも奇形を有しない場合, それぞれ奇形仔の出現頻度は60%,45%,40%,20%である. これは15世代までのものを平均したものである. このことから, 単冠状動脈奇形は遺伝することが明らかとなった. 雌雄での出現頻度の差が認められないことから伴性遺伝ではないと考えられる. また, 16世代以降になるとマウスの妊娠率が急に低下してきたため, この遺伝子のcondensationは困難になってしまった. 2.我々の見出したマウスの冠状動脈high takeoffの特異性を調べるためにC3H/He,DBA/2,CBA,BALB/c,C57BL/6の5系統のマウスについてその存在を検討した. その結果, C57BL/6系マウスにのみ右冠状動脈開口部の異常高位いわゆるhigh takeoffがあることがわかった. そこでC57BL/6と右冠状動脈口が正常位にあるBALB/cとの交配実験を行ない同奇形の遺伝性について検討した. F1(5週令)での右冠状動脈の開口部位の高さを写真上で測定し, 平均値を比較した結果, BALB/cの高さよりわずかに高いことが明らかになった(P<0.01)またBALB/cでは出現しえない明らかなhigh takeoffと認められる個体が約12%に出現する. この遺伝形式についての解明には更にF2以後について実験を行うことが必要である.
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