研究概要 |
急速凍結置換固定法で処理した糖タンパク分泌腺組織資料に包埋後免疫染色を施し, きわめてよく保存された微細形態のうえに, 高い検出率で物質の局在を同定することにより, 糖タンパク分泌細胞の分泌機序の解明に資することを目的として本研究を行った. 前年度は, 当研究室で糖タンパク分泌機序解明のためのモデルとして試用しているスナネズミ耳下腺からアミラーゼを精製し抗体を作成した. また, これと既有の膵アミラーゼ抗体を用いて, 急速凍結置換固定法の利点を生かし, 且つ抗原性の保存の良い置換剤と包埋条件を吟味した. 今年度は上記で得た最も望ましい条件下で, 1.スナネズミ耳下腺, 舌下腺および顎下腺の腺房細胞における耳下腺アミラーゼの局在を確かめた. 耳下腺腺房細胞, 舌下腺漿液部細胞は二相性果粒を持つが, いずれもその芯の部分に免疫標識は限局して検出された. 顎下腺腺房細胞に標識はほとんど認められなかった. 2.急速凍結法で処理した試料には置換剤, 包埋条件のいかんを問わず化学固定を施した場合に比して格段に高い標識密度を示し, また芯の部分への限局性も明瞭である. 3.分泌に関与する細胞小器官上の標識を半定量的に解析した. 分泌果粒に関しては, 膵アミラーゼを化学固定した試料上の標識を定量解析した他の報告と比較して, 急速凍結法が抗原性の保存に優ることは明白である. 濃縮胞に関してもほぼ同様のことがいえるが, ゴルジ装置については本研究による標識密度が低い. このことは膵外分泌細胞と, 唾液腺漿液細胞との分泌果粒に含まれる糖の量の差, ひいてはゴルジ装置における糖鎖導入の過程の違いを反映していると考えられ今後の興味ある課題である. 当初, 計画していレクチン細胞化学に関する同様の検討は並行しておこなうことが出来なかったので今後, 継続して進めたいと考えている.
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