研究概要 |
パラコート(PQ)の細胞毒性に関し, 従来細胞内小器官の一つ小胞体で過酸化を受けて生じるPQラジカルがその本体であるとされていたが, ミトコンドリアが標的であることが明らかになった. 1.PQはミトコンドリア電子伝達系のチトクロム酸化酵素を拮抗的に阻害し, Ki値は5.8mMであった. 2.NADH存在下にPQが肝ミトコンドリアでO_2吸収を促進し, PQラジカルになることが判明した. この反応はロテノンで阻害されないので, NADH脱水素酵素で直接還元されることが示唆された. 3.NADHとPQの存在下に分離ミトコンドリアが崩壊した. ブロムベンゼン(BB)はマウス細気管支上皮のクララ細胞を特異的に壊死させた. BB4.85mmoles/kg投与後12時間目にクララ細胞の滑面小胞体の膨化と空胞化が生じ, 24時間目に壊死した. BBによるクララ細胞傷害はSKF525-A(70mg/kg)の投与で完全に抑制され, 同傷害が薬物代謝系のチトクロムP-450を介して起こることが明らかになった. BBで傷害された細気管支では, クララ細胞が線毛細胞から分化再生することが発見された. 〔関連した成果〕 SPFラットの気管上皮細胞はペルオキシダーゼ陰性であるが, コリネバクテリウム感染でペルオキシダーゼ陰性になった. セリウム塩による電子顕微鏡的細胞化学検出法でH_2O_2を検出し, 肺胞マクロファージは好中球や腹腔マクロファージよりH_2O_2生成能が弱いことを見出した. 定量的電子顕微鏡細胞化学法でII型肺胞上皮細胞は好気的代謝を, I型細胞は嫌気的代謝をしていることが明らかになった.
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