研究概要 |
中枢内アミンニューロンのうち, 脳幹下部に散在するノルアドレナリン(NA), アドレナリン(AD), セロトニン(5HT)を含有するニューロン群はかなく良く同期して活動する. とくに活動を停止するときは完全に同期している. この特徴は厖大なニューロン鎖で働く中枢神経系の活動を調節しているアミンニューロンの機能にとって重要な意味を持ったに違いない. 本研究は, アミン神経系を統御する機構の一つとしてアミン性半閉鎖回路の可能性を検討するべく計画されたものである. 1.上記目的を形態学的に追求するためには, アミンニューロンを選択的に標識して電子顕微鏡で観察できる方法が必要である. このためにモノアミン酸化酵素(MAO)の新しい酵素組織化学的証明法を開発した. 2.この方法によって, (1)上記アミンニューロンは全て染出される. (2)NAADニューロンはA型MAOを, 5HTニューロンはB型MAOを持つことを明らかにした. 3.ラット青斑核に本染色を施し電顕で観察した結果, (1)青斑核NAニューロンは主樹状突起を内腹側の中心灰白質中に長く伸ばしている. (2)アミン性入力は主樹状突起に漏浸性に終わるものがもっとも多いことが分かった. 4.青斑核複合体を他から遊離させた標本も同様観察した結果, (1)アミン入力には外来性のものと内因性のものとがある. (2)内因性のものはNAニューロンと, 共存する非アミンニューロンとに終わる. (3)NAニューロン細胞体に終わるアミン性終末の多くは内因性(おそらく反囲側枝)である. (4)共存する非アミンニューロンから入力が多くNAニューロンに終わる. 以上の結果からアミンニューロンの活動は, 外来性アミン入力, 共存する非アミンニューロンとの相互入力, 反囲性自己入力などによって調節されていることが推論される.
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