研究概要 |
ラット視床下部のメラニン凝集ホルモン(MCH)様物質について以下の研究成果が得られた. 1.ラット脳内のMCH様免疫陽性ニューロン(MCH様ニューロン) シロサケMCHの抗体を用いた免疫染色により, ラット脳内のMCH様ニューロンは視床下部に限局して存在し, , 不確帯, 視床下部外側野, 脳弓周囲に多いことを明らかにした. MCH陽性線維は前方は大脳皮質, 後方は脊髄にも検出された. しかし, 下垂体神経葉, 正中隆起への投射はほとんど見られない. 2.ラット視床下部のMCHとα-MSH様免疫活性 隣接切片を用いてMCHとα-MSH様免疫陽性細胞を比較した結果, MCH様ニューロンの全てがα-MSHとも反応しており, 両ペプチドの免疫陽性反応は同一ニューロンに共存することが明らかとなった. 3.シロサケMCHにおける構造と活性の関係 ラットMCH様物質の検索に先立って, シロサケMCH抗体とメラニン凝集生物検定における活性部位とシロサケMCHの構造との関係を検討した. MCH生物活性にはMCHの環状構造とTyr^<11>,Arg^<12>が重要であり, MCH抗体の抗原認識にはC端と環状構造が必要であることが確められた. 4.ラット視床下部MCH様物質の化学的性質と細胞内分布 ラット視床下部抽出液のHPLC分画について, MCH免疫活性(RIA)と生物活性を測定した. 両活性は同一分画に検出され同一物質に由来することが示唆された. 同時に, この物質がMCHに類似したペプチドであることも示唆された. 電顕免疫細胞化学によりMCH様物質は果粒(90-150nm)内に検出され, 神経終末部にも認められるところから, ラット脳内で神経修飾作用をもつことが示唆された.
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