研究概要 |
陰部神経の遠心性および求心性要素の中枢内分布, および陰部神経の起始細胞群に対する下行性投射核について, HRP法を用いて実験を行ない次の結果を得た. 陰部神経は坐骨直腸窩で会陰部横紋筋に分布する筋枝と陰茎背神経および会陰神経とに分かれる. 陰部神経の筋枝の起始細胞は第4腰髄下部から第6腰髄の上部, 或は第5腰髄の上部から第6腰髄の下部の高さにおいて, 前角の背外側部に位置する背外側群(DL群), 背内側部の背内側群(DM群)及びDL群の吻側で散在する外側群(L群)に分かれる. また, 仙髄副交感神経核内にも陰部背神経内に線維を送る少数の細胞が認められた. 陰茎背神経の求心性線維は主として第5腰髄から第6腰髄, 或は第6腰髄から第一仙髄の高さにおいて, 同側の1層全域, 2層-6層の内側部, 後灰白交連部の背側部及び仙髄副交感神経核に終わるが, 少数の繊維は反対側の後肺白交連部および1層-6層の内側部にも分布する. 一方, 会陰神経の求心性線維は主として同側の1層-6層の中間部及び仙髄副交感神経核に終わる. しかし, 両者の間には少数の重複する線維が認められる. 陰部神経の起始細胞群に対して, 下行性に投射する核は吻側橋被蓋における上小脳脚の外側部にみられる傍小脳脚核の外側部およびK〓lliker-Fuse核等である. また吻側橋被蓋における上小脳脚の内側部から後灰白交連部を介して陰部神経起始細胞群に投射する線維の存在も示唆される. 従って, 今後HRP法だけではなく, 電子顕微鏡並びに神経免疫学的方法等を用いた研究が待たれる.
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