研究概要 |
生後1.5, 3, 6, 12, 20ヶ月以上のラットを用い, ハロタン麻酔下に種々の呼吸調節機能の変化を調べ以下の知見をえた. 1.体重当りに換算した毎分換気量, O_2摂取量, CO_2排出量, 一回換気量, 呼吸数は月令とともに低下した. 2.加令により動脈血O_2分圧の進行的低下がみられた. また老齢ラットでは死腔増加によると思われる動脈血CO_2分圧の上昇がみられた. 両者とも肺の異常によると考えられた. 3.CO_2-換気応答の勾配(CO_2に対する感受性をあらわす)は月令とともに低下し, CO_2排出量の変化と完全に比例した. しかしCO_2吸入刺激による換気量増加をCO_2吸入前の値との比で検討したところ, 加令による減少は僅かであった. 即ちCO_2吸入刺激前の換気量は加令により低下するがCO_2吸入中にはこれに見合った増加が認められ, 予備力としてはさほど低下していないと考えられた. たヾし, 加令によって呼吸数増加の程度が減少し, 他方一回換気量増加の程度が増加する傾向がみられた. 4.若年ラットでは低O_2ガス吸入時の呼吸促進に続発して, 呼吸が抑制され易いことが判明し, この抑制の機序を解明した. さらにこの低O_2による呼吸抑制はヘモグロビンのO_2親和性を増加させると著明に軽減した. 5.ラットの呼吸化学感受性を決定する頚動脈体化学受容器の特性を調べ, 低O_2に対して感受性が高く, かつ順応現象が認められた. CO_2に対する感受性は著しく低いことも明らかとなった. 6.関連する諸問題, i)麻酔ラットの呼吸性神経活動が化学刺激によってどのように変化するかを調べ, 上気道呼吸筋を支配する呼吸運動ニューロンの反応は, 横隔神経運動ニューロンの反応と著しくことなることが判明した. ii)CO_2吸入時の換気量増加の時間経過を分析し, 呼吸数応答は一回換気量応答にくらべて著しく速やかであることが判明した.
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