研究概要 |
ラットの単一膵外分泌腺腺房細胞に, パッチ・クランプ法全電流計測法とロック・イン・アンプを用いた位相検出法を適用した結果, アゴニスト(アセチルコリン, コレチストキニン)刺激下, 膜容量および膜コンダクタンスの変化は各々, 200-1000fH, 32nSであることが解った. 当初計画であったFFT法は誤差が大きく, かえって不適切であった. よって位相検出法により膜容量および膜コンダクタンスの変化を解析し, 次のような結果を得た. 1.アセチルコリン(0.08-0.1μM)刺激下, 細胞内EGTA濃度が低い(70μM)場合に限り, 一過性の膜電流応答(増加)が認められた. この応答は細胞内にGTP-γS(100μM)を投与した場合に延長し, GDP-βS投与により消失した. このことは, GTP-結合蛋白質が上記アゴニストの情報伝達過程に係っていることを示唆している. 更に, 上記応答は細胞内EGTA濃度を高めた場合(1mM)に消失した. 従って, GTP-結合蛋白の作用は, Ca動員機序に関連していると結論できる. 2.膜容量と膜コンダクタンスを位相検出法により同時計測すると, 両者はほぼ同一の時間経過で増加し, そのピーク値は膜容量で200-1000fH, 膜コンダクタンスで3.2nSであった. 膵腺腺房細胞内のチモーゲン顆粒膜の膜容量は10fFと推定されており(Maruyama, 1986;Pflugers Archiv.407, 561-563), 従ってアゴニスト刺激に伴い20-100個のチモーゲン顆粒が管腔側膜へ融合するものと考えられる. 以上のような変化は各々, 外分泌腺腺房細胞に特徴的な酵素の開口分泌と等張溶液分泌に対応しており, 両者は同一の細胞内メッセンジャー, カルシウムイオン, によりほぼ同時に活性化(制御)されていると解釈できる.
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