研究概要 |
静脈系の機能と構造, ならびにその調節機, に関する生理学的研究の内, 本研究プロジェクトでは1.静脈伸展性の部位差, 2.下肢静脈伸展性と筋ポンプ作用, 3.静脈弁分布様式の特性, 4.静脈系におけるアミン作動性神経の分布様式とその種差について検討し, 下記のような結論を得た. 1.静脈伸展性の部位差: イヌより摘出した頸部, 四肢, 体幹部の主要静脈標本を用いて, 内圧-容積関係を測定し壁の伸展性の部位差を系統的に検討した. さらに静脈平滑筋賦活時の伸展性の変化についても検討を加えた. その結果, 体幹部の静脈においては, 胸部および腎上部の下大静脈の伸展性が低く, 横隔膜収縮という強力な外力によって静脈壁が圧平するのを防止していることが示唆された. 2.下肢静脈伸展性と筋ポンプ作用: イヌ後肢の骨格筋筋層間の静脈と皮下の表圧性静脈を用いて機能的構築を解析したところ, 骨格筋血流量の大きな変化に対応し, 筋ポンプ作用の有効性を高めるような機能・形態学的特性の存在が判明した. 3.静脈弁分布様式の特性: ヒト・サル・イヌ・ウサギの静脈系を用いて, 静脈系の出現部位を体系的に解析した. その結果, 静脈灌流量制御部分は大別すると体幹部・四肢・門脈系の3つの部分に区分できると同時に, 静脈弁は血液の逆流防止機構のみならず, 強力な外力によって静脈壁が圧平するのを防止する箍作用と静脈壁の過伸展防止作用をも有していることを確認した. 4.静脈系におけるアミン作動性神経の分布様式とその種差について: サル, イヌ, ウサギいずれの動物においても静脈系の内, 腹部の下大静脈, 総腸骨静脈付近に最も密にアミン作動性神経が分布し, しかもその分布密度には著しい種差のあることも判明した.
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