研究概要 |
骨格筋におけるNa/K輸送がインシュリンによって促進されることは知られているが, この機構は未だ解明されていない. 本研究では, 〔^3H〕ouabain結合量を指標としてインシュリン投与後の形質膜上のNa/K輸送ATPase分子の密度の変化を調べると共に, 形質膜分画のNaK-TPase活性の変化も調べた. 実験には牛ガエル(Rama catesbeiana)下肢骨格筋を用い, 対になっている一方を対照として実験を進めた. 形質膜分画の精製には5′-nucledtidase活性を指標とした. 実験の結果は, 次のことが明らかとなった. 1.筋表面への〔^3H〕ouabain結合量は, インシュリン(250mulml)を1時間作用させることによって約1.7倍に増大した. 2.筋表面に結合した〔^3H〕ouabainの解離速度は正常の場合では0.054±0.006/hであり, インシュリンと共にincubatelした筋では0.033±0.003/hであった. 3.10^<-4>M cald ouabainの存在下では, インシュリンを与えても〔^3H〕ouabain結合量の増大は認められなかった. 4.細胞内蛋白輸送を阻害することが知られているmonensin(10^<-5>M)をincubate solutionに加えると, インシュリンによる〔^3H〕ouabain結合量の増大は完全に抑制された. 5.インシュリンと共に1時間incubateした筋から取り出した形質膜分画のNaK-TPase活性はインシュリンを作用させなかった筋から取出した形質膜分画のNaK-TPase活性の約2倍であった. 6.形質膜浮遊液にサポニン(0.33mg/mg protein)を加えると, 浮遊液のNaK-TPase活性は2倍に増大した. サポニンを作用させた形質膜浮遊液にインシュリンを加えてNaK-TPase活性には変化は認めされなかった.
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