研究概要 |
1.家兎およびラット腎より近位尿細管S_1+S_2及びS_3由来の刷子縁膜バジクル, 側底膜ベジクル調製法を確立した. 刷子縁膜はCaあるいはMg沈澱法, 側底膜はパーコル密度勾配遠心法を用いた. 純度は諸家の報告と同等もしくはそれ以上で, 以下に述べる実験等で使用するに十分な膜標品であった. 2.アミノグリコシド系抗生物質の刷子縁膜ベジクルに及ぼす影響を, N〓依存性ブドウ糖輸送および膜脂質流動性より検討した. 前者は迅速〓過法, 後者は電子スピン共鳴法により測定した. gentamicin,netlmicinをin vino投与した家兎より得たベジクルでのブドウ糖輸送は, 前者でS_1+S_2由来の輸送系のみ障害され, その障害様式はaffinity低下を示した. これら薬物をin vitroで添加した際には濃度依存性にブドウ糖輸送のcapacity低下がみられ, affinityhは不変であった阻害定数よりみるとS_1+S_2由来の輸送系が最も障害されやすかった. これらは病理組織学的にみた障害度と合致する成績であった. 一方, S-16-doxyl stearic acid(S-SAL,16-SAL)をプローバとした膜内スピンラベル運動性は, S-SALをプローバとして用いた際にS_1+S_2由来ベジクルで, gentamicin添加時のみ低下が認められた. さらに薬物を含まないbaffarで遠心操作を繰り返し, 添加薬物を除去したベジクルにおいては, ブドウ糖輸送および膜脂質流動性がほぼ完全に回復することが観察された. これらの成績より, gentamicinはnetilmicinより毒性が高く, 前者は刷子縁膜のpolar head grav近傍に可逆的に結合することにより膜脂質流動性低下, N〓依存性ブドウ糖輸送障害をひきおこすものと考えられた. また, 膜脂質流動性とブドウ糖輸送との間には何らかの関連性のあることが示唆された. 3.ベジクルをSDSで可溶化, 電気流動後にRI標識リガンドで検出する方法に関しては, 今後さらに泳動条件, 感度および特異性の高いリガンドの開発などを検討すべきと考えられた.
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