研究概要 |
本研究の所期の目的は, 子宮筋の細胞膜を高透過化し(hyperpermealize), カルモデュリンまたはエクオリン等の高分子物質を細胞内に拡散により充填し, また膜を修復して, カルモデュリン等を封入したまま, 筋細胞の興奮性および収縮性を回復することである. まず最初に, 細胞膜の高透過化処理としてサポニン処理を行なったが, 正常液に戻してからの筋細胞の興奮性の回復が良くないことが見出された. 次いで, Morgan達(1984)が, 血管平滑筋について行なった方法に準じて, 20mM EGTA処理を行ない, その後正常液に戻すと興奮性および収縮性の回復が良好であることが見出された. 以上の膜高透過処理中に, カルモデュリンを添加すると, 収縮が増大し, 膜が高透過化されたことが示された. 以上の実験を行なうに当り, 助成金により購入したデータレコーダは記録および再生のために使用した. エクオリンの封入によるカルシウム性発光の測定は, 興奮-収縮連関の解明に有用であり, またこれは研究目的の一つでもあったが, 発光検出装置の不備により, 未だ成功していない. 上記実験中, カルシウム欠除液中にアデノシン3燐酸(ATP)を添加すると, 収縮が増大であることが見出された. このAPT誘発収縮は外液カルシウムに非依存的であり, 外液マグネシウム, マンガン, ランタニウムに依存して発生する. 他面, 高カリウム液中で発生するカルシウム依存性収縮は, パパベリンにより抑制されるが, カルシウム非依存性収縮はパパベリンにより抑制されない. このATPにより, 誘発されるカルシウム非依存型収縮が, 子宮平滑筋のアクトマイオシン系によるものか, まるいはその他の収縮系のものかなど, 今後検討すべき問題である.
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