研究概要 |
呼吸調節に関与する中枢性化学受容野の所在とその特性を明らかにするためネコで実験を行い次のような結果が得られた. 麻酔したネコの迷走神経は両側とも切断し, 非可動化したのち人工呼吸器で換気を維持した. 吸息活動の指標として電気的に積分したPhrenic N,のActivityを用いた. 1.両側の外頚動脈と, 前下小脳動脈のレベルよりも上部で脳底動脈を閉塞すると閉塞部位よりも下流の血圧は約15mmHgに下降し, PNAは閉塞後1分内に完全に消失した. 化学的呼吸刺激因子(Pco_2,Po_2)としての強さが大きい程PNAの抑制効果は軽減する. しかし, 延髄よりも上位から延髄の呼吸調節機構に対して強力な呼吸促進経路のあることを示唆している. 今後, この促進経路を電気生理学的に明らかにする予定である. 2.末梢の化学受容器を除去した状態で, 肺胞Po_2を60〜40TorrにするとPNAは急速に抑制され, Pco_2-刺激閾値は高くなる. しかし, Pco_2-PNA応答曲線の傾斜は空気あるいはO_2呼吸時のそれと殆んど差のないことがわかった. したがって, 低酸素による中枢性化学受容野の抑制は他の一般組織の抑制とは異った性質のものであることがわかった. 3.延髄腹側の前下小脳動脈へ局所的に高CO_2血液を注入すると吸息活動は増加する. この血管の支配下にあると思われる部位へマイクロpHガラス電極を刺入しpHを測定するとその変化は前下小脳動脈から注入する高CO_2血液に応じて低下することがわかった. 更に, この状態でCO_2を吸入させ血液のPco_2を高くするとIntermediate areaや延髄の尾側のpHは低下するが前下小脳動脈の付近のpHならびPNAは変化しなかった. また, 前下小脳動脈へ局所的にIndia inkを注入するとinkは延髄の吻側の血管にあることがわかった. 以上から, 中枢性化学受容野は前下小脳動脈からの血液を受けている部位にあることがほぼ確実になった.
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