研究概要 |
1,4dihydropyridine系のCa-agonist,PN(S)202-791(5×10^<-8>-10^<-7>M)は, 11.2mMグルコース誘発緩徐電位のプラトウを延長(200〜300%)するが, スパイク電位の振巾には大きな影響を与えなかった. しかしプラトウ延長に伴って, プラトウに重畳した振巾の小さい(数mV)電気活動の発生がみられた. 一方Ca-antagonist,PN(R)202-791(5×10^<-8>-10^<-7>M)の初期効果はプラトウの短縮で, 後効果はスパイク電位発生頻度の減少であった. 高濃度(10^<-6>M)のantagonistはプラトウ短縮と膜の脱分極を同時に起こし, スパイク電位発生を抑制する. この抑制は外向き電流によって除かれる. また正常液中のCa濃度を2.8mMから5.6mMあるいは8.4mMに増大すると, グルコース誘発スパイク電位振巾の増大とプラトウ短縮につづいた膜の再分極が観察された. カルバコール(10^<-7>-10^<-6>M)は, グルコースで脱分極された膜をさらに脱分極して, グルコース誘発緩徐電位とスパイク電位の発生頻度を増大する. これらの電気活動の頻度増大は膜電位依存性である. また膜の脱分極は一夜絶食させたマウスより摘出したΒ細胞では顕著でなく, 絶食をほどこさなかったΒ細胞で顕著であった. これらの結果は, カルバコールによるCa流入の促進を示唆している. 一方正常液中(2.8mMグルコース)でカルバコールで前処置されたΒ細胞では, 11.2mMグルコース反応が悪るかった. すなわち, グルコースによる膜の脱分極はみられるが, 活動電位発生はみられなかった. 以上の結果より, Β細胞には2種類のCaチャンネルが存在すると思われる. すなわち, 1つはスパイク発生に関係するチャンネルと, 他は緩徐電位のプラトウ発生に関係するチャンネルである. カルバコールは前者に主として作用するが, 他方でイノシトール系とも関係していると推測される. 膜の脱分極とClイオンとの関係については, 今後の研究が必要である.
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