研究概要 |
前年度の報告でカハル間質核, 特にカハル間質核から前庭核への投射系が垂直眼球運動の位置形成機構に関与することを示した. 今回はまずこの経路の性質を解析する目的で覚醒ネコで垂直眼球運動時のカハル間質核領域のニユーロン活動を記録し, 逆行性刺激を橋内側縦束に加えて前庭核付近への投射の生むを調べた. その結果, カハル間質核領域で記録されたニューロン132コの内訳は垂直方向のバーストトーニックニューロン(52%), トーニックニューロン(13%), バーストニューロン(4%)で, 残り31%はこれらのいずれにも属さないが垂直半規管刺激に応答したニューロンであった. バーストトーニック及びトーニックニューロンの発射頻度は垂直方向の眼位と直線関係にあり, これらの約半数は前庭核付近へ投射していた. これは, これらニューロンの有する垂直眼球位置信号が前庭核付近へ投射されることを示す. 次にこの投射経路が垂直眼球位置形成機構に関与することを更に詳しく調べるために, 垂直前庭動眼反射の利得(積分値)を人為的に上昇させる状況を旁, その時のカハル間質核ニューロン活動を解析した. 人為的な利得の上昇を作るため一側眼の上下直筋腱を切断して垂直運動を制限し, その眼への視覚入力をパッチで遮断し, 回転台上でパッチを健康側へ移して前庭動眼反射を解析した. 0.11Hz(±10°)のPitch回転刺激により利得は15分以内に上昇を始め一時間以内で視覚入力遮断時の平均利得はControl値の約150%に上昇した. パッチを術側眼にもどし健康眼に視覚入力を与えると利得は可逆的にControl値にもどった. このような適応性の利得変化時にカハル間質核領域のバーストトーニック及びトーニックニューロンの応答利得は前庭動眼反射の利得変化と平行して有意な変化を示した. これはカハル間質核が前庭核への投射を通じて前庭動眼反射の位置形成機構に関与することを更に強く指示する.
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