研究概要 |
ウサギ嗅球を抗原として得られた抗体11-4G12を用いて, 幼若ウサギ小脳, ウサギ胎児小脳の切片において, 免疫組織化学的検索を行なった. 1.生後間もない幼若ウサギでは, 抗体4G12に対して, 虫部前葉プルキンエ細胞が一番強く反応したのに対して, 虫部後葉プルキンエ細胞は弱い反応しか示さなかった. 2.虫部前葉プルキンエ細胞は形態的に, 非常に未熟であるのに対して, 虫部後葉プルキンエ細胞は形態的分化が進んでいた. したがって, 幼若ウサギの小脳は, 形態的にも, 物質的な面でも, 小脳内の部位による差があることが判った. また, 早期に到着した半球部のプルキンエ細胞は, 未分化のままで, 休眠していることが確認された. 次に, 抗体4G12に対する抗原の経時的変化について調べた. 1.抗体4G12に対する抗原は, 胎生19日の小脳プルキンエ細胞に発現されており, 胎生25日には, 染色性が増強した. 抗原分子が増量した結果と考えられる. 2.胎生25日の前葉プルキンエ細胞の染色性の増強により, 小脳の部位的差が明確となった. しかし, この時期の後葉プルキンエ細胞は形態的に未熟であり, 部位的差はなかった. 3.その後, 後葉のプルキンエ細胞は前葉のプルキンエ細胞より速く分化が進み, 生後1日目には, 前葉と後葉のプルキンエ細胞の形態的差は明確となる. しかし, 染色性の部位的差は, 生後5日目まで保たれている. 4.ウェスタンブロットを行ない, 抗体4G12が認識する抗原分子の分子量は26kdであることが判った. 以上の結果から, 抗体4G12に対する抗原分子は, 小脳では, 胎生半ばより発現し, 胎生25日には, 前葉プルキンエ細胞に豊富に存在するが, 後葉プルキンエ細胞には, わずかに存在する程度であることが判った.
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