研究概要 |
神経冠の起源は形態的には神経板の両縁部に朔る事ができる。ところで神経板は嚢胚期外胚葉のうち中軸中胚葉に裏打ちされた部分から誘導される事(中軸中胚葉の作用を逃れた部分は表皮組織に分化する)、又神経冠については移殖した中軸中胚葉による二次神経誘導の実験から神経板の誘導に伴い誘導される事が知られている。アフリカツメガエルを用いた従来の研究で神経冠由来色素細胞に対する単クローン抗体(NC1)を得たが、さらに分化神経細胞に高い特異性を有す単クローン抗体(N1)が得られたので、本研究ではこれら単クローン抗体を利用して上記神経誘導過程をin vitro胚細胞培養系で解析した。方法(1)ツメガエル初期嚢胚から各部域を10〜30片切り出す。(2)Ca,Mg-frec溶液中で細胞を解離させ部域別細胞プールを調製する。(3)各プールから細胞を一定数ずつとってマイクロウエルに分注し単独或は部域間混合培養を行う。(4)一定時間培養後固定し特異的単クローン抗体(抗表皮抗体E3,抗神経抗体N1,抗色素胞抗体NC1)を用いた間接蛍光抗体法によリマイクロウエル中で分化した細胞を同定する。結果(1)予定外胚葉細胞の培養では表皮細胞が分化し、しかもその発生の時間経過はin situでのそれとよく一致した。(2)予定外胚葉細胞と予定背側中胚葉細胞(中軸中胚葉の前駆胚細胞)とを混合培養すると、表皮細胞の分化は著明に抑制されると共に、神経細胞が分化してきた。又いくつかの実験例では色素細胞の分化も見出された。対照として予定腹側中胚葉細胞と混合培養した場合には表皮細胞が分化し、神経細胞の分化は見られなかった。ただ若干例で色素細胞の分化がみとめられた。(3)予定外胚葉,背側中胚葉細胞の混合培養系にみられた表皮細胞分化の抑制、神経細胞,色素細胞分化促進の程度はいずれの場合も、ウエルに加えた予定背側中胚葉の数に強く依存した。
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