研究概要 |
本研究はヒトとラットに運動を行わせ, γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)の酵素蛋白量と活性および4種のリソゾーム酵素活性と2種のそれらの合成律速酵素活性を測定することにより, 運動がミクロゾームとリンゾームに及ぼす影響を検討した. 1.ヒト:男子学生に1回5km以上, 6回/週の割合で10週間のランニングトレーニングを行わせた. トレーニング前・後のVo_2maxテストでは血漿γ-GTP活性はいずれも有意に増加したが, ELISAで求めた酵素蛋白量は変動を示さなかった. 一方, トレーニング後の安静値については活性は変化しなかったが, 酵素量は著名に現象し, 肝細胞のミクロゾーム膜のstabilityの増強あるいは血漿での比活性の上昇が示唆された. 2.ラット:(1)急性運動負荷:オスのWistar系ラットについて完全に消耗状態になるまで強制遊泳させた。対照とともに肝を摘出し、細胞顆粒分画法によってミクロゾ-ムと可溶性分面(S)を分離した。ミクロゾ-ム分画については等張のショ糖溶液(M_1)、蒸留水(M_2)1時間インュベ-トしたものと、0.2%Triton X-100処理したもの(M_3)についてγ-GTPの各測定を行った運動後、M_3のγ-GTPは活性、酵素量ともに有意に低下し、逆にSでは増加傾向がみられた。Q(in vitroの膜透過性)=(M_2)/(M_2+D7、P(in vivoの膜透過性)=D7S)/(S±M_3)とそれぞれ定義すると、いずれのγ-GTPのQとPも運動後増加傾向がみられた。(2)トレ-ニング:ラットに35°Cの水温で1回3時間、5回/週の割合で10週間の水泳トレ-ニングを行わせた。肝のγ-GTP酵素量、活性のいずれのQとPも低下傾向がみられ、ヒトと同様にミクロゾ-ム膜のstabilityの増大が_3された。しかし、酵素蛋白量と活性の変動は必ずしも平行しなかった。法、肝リソゾ-ム関連酵素のうちアリルスルファイタ-ゼBのみが水泳トレ-ニング後有意に上昇した。以上の結果、急性と持続運動の肝酵素に及ぼす影響が相反することが示唆された。
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