研究概要 |
中枢浸透圧受容機構と性ホルモンの連関についてのinvivoおよびinvitro実験系を用いた研究の成績の最終的な概要は以下の通りである. 1.視索前野の浸透圧受容とエストロジェン;雌ラット視索前野における浸透圧およびアンジオテンシン刺激, 電気刺激の室傍核神経分泌細胞に対する影響はエストロジェン処置によって影響を受ける. 2.性周期と血漿浸透圧;飲水行動および血漿浸透圧は雌ラットの性周期におけるエストロジェンの血中濃度の増加に伴って低下する. 3.エストロジェン処置と血漿浸透圧;卵巣摘除ラットへのエストロジェンの皮下投与は飲水行動, 血漿浸透圧を有意に減少させる. 4.視床下部・下垂体後葉系とエストロジェン;性周期の推移およびエストロジェン処置によって血漿浸透圧が下がった場合でもバゾプレッシン産生細胞の興奮性, 活動にはなんら変化は認められない. invitro実験系を用いた同じ浸透圧環境においては, 対照卵巣摘除群よりもエストロジェン処置群のバゾプレッシン産生細胞に有意に高い発火活動が検出される. しかし, 灌流液浸透圧の上昇に対する両群の細胞活動の増加分には差が認められない. 以上の成績は, エストロジェンが明らかに中枢神経レベルにおいて浸透圧受容機構に干渉し, 下垂体後葉からのバゾプレッシン放出と連関していることを示している. しかしながら, 他のエストロジェン感受性部位において確認されている放射性エストロジェンの集積は視索上核におけるバゾプレッシン産生細胞においては確認されておらず, エストロジェンのバゾプレッシン産生細胞への直接効果とは考えにくい. invitro実験系において態スライス標本を用い, 視索上核が周囲神経機構から切離されていることを考慮すると, この干渉は視索上核内あるいは周辺のエストロジェン感受機構からの間接的なものと考えるのが妥当と思われる.
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