1.ラットの血漿オキシトシン(OXT)に対する摂食の影響:雄ラットに、採血用の心房内カニューレを留置し、14-16時間絶食させた後、固型飼料を10分間自由に摂取させ、その前後で採血を行った。採血は摂食開始前2分間隔で4回、摂食開始後は2分間隔で10回と摂食開始後30分に1回行い、RIAによりOXTのアッセイを行った。摂食前後における血漿OXTレベルはコントロール期間の平均値は35.9±1.6pg/ml、摂食開始後10分間の平均値38.3±1.6pg/ml摂食開始後10〜20分間の平均値41.3±1.4pg/ml、摂食開始30分の平均値45.1±2.7pg/mlで、摂食開始後の値はいずれもコントロール値に対し有意に(P<0.05)高かった。個々のラットについて摂食前後のOXT分泌パターンを見ると、摂食開始前の血漿OXTレベルは比較的安定していたが、摂食開始後は13例中11例のラットに10〜20pg/mlの範囲の動揺が認められた。このOXTレベルの動揺を授乳中ラットの血漿OXTレベルの変動と比較すると、射乳反射の際のように明瞭なパルス状とならず、また、摂食開始時間との関係も個体差が著しかった。なお、摂水時には血漿浸透圧が低下する前に血漿OXTの減少が認められた。 2.OXT細胞の活動に体するブドウ糖の影響:ウレタン麻酔下の授乳期ラットよりOXT細胞の活動を同定記録し、その活動に対する1.5Mブドウ糖i.P.投与の影響を観察した。1.5Mブドウ糖投与でOXT細胞の活動は抑制された。一方、同じ浸透圧濃度の食塩水投与ではOXT細胞の活動は興奮を示した。 以上の結果から、ラットでは、摂食時にはOXT分泌が促進されることが明らかとなった。OXTは血中ブドウ糖濃度を上昇させると報告されているが、このブドウ糖濃度上昇はOXT細胞の活動を抑制するところから摂食時にはOXT細胞-血中ブドウ糖の間にネガティブフィードバック調節機構が働くことが示唆された。
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