研究概要 |
寒冷ふるえ発生の神経機構に重要な役割を果たすγ運動ニューロン活動が中脳局所温度の変化によって影響を受けるか否か, 若し受けるならばどの様であるかを調べるため, 両側視索前野・前視床下部領域を電気的に破壊し上位脳からの影響を排除したラット標本の腰仙部脊髄前根より単一γ神経線維(計64例)の放電活動を記録した. 先ず正常中脳温度におけるγ神経線維の自発放電活動には, 持続的発射を示すもの(64%)と, 周期的に変動するもの(36%)が見出されたが, これら二群のγ神経線維の伝導速度の平均値の間には有意の差はなかった. 潅流式サーモードによる中脳局所温度刺激に対して両群γ線維71%が反応し, その発射頻度は例外なく中脳冷却(37.5°C以下)により増加, 加温(37.5°C以上)により減少した. この中脳冷却・加温に対するγ放電頻度の増加・減少の動態は, 個体の熱平衡維持における熱産生反応の低体温域における促進及び高体温域における抑制の方向に一致しおり, γ放電活動の温度依存性(Δimp./sec/°C)の平均値は潅流水温1°Cあたり37.5°C以下の低温域で-1.5±0.1imp./sec/°C及び37.5°C以上の高温域で2.8±0.5imp./sec/°Cであった. 本研究途上実測された中脳冷却・加温時の神経組織温の変化は, サーモードから1mmの距離で潅流水温の変化の約1/3, 2mm以上ではそれ以下に減少することを考慮すれば, この結果は, γ運動ニューロンの活動が中脳の正常温度からの極めて僅かの変位によって強く影響されることを意味している. 下腿三頭筋々紡錘の筋伸張に対する求心性応答を解析する実験においては, dynamic γ及びstatic γ activationを示す温度応答が各々63%(27/43)及び29%(2/7)にみられ, 前者の方がより優勢ではあるが, 両γ motor systemに対する中脳温度受容組織からの強力な下行性統御の存在を示唆している.
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