研究概要 |
本研究は抗高血圧薬としての有用性が注目されているカルシウム拮抗薬の抗高血圧作用機序を, a)血圧の維持ならびに高血圧発症において重要な位置を占める腎機能への影響の解析, b)血管平滑筋における細胞外カルシウムの細胞内移動に最も大きな要因となる生体内昇圧因子への影響の解析, によって検討し, 下記の結果を得た. 1.麻酔イヌにおいて, カルシウム拮抗薬ニフェジピン(Nif)及びCD-349(CD)腎動脈内投与により用量依存的な腎血流量の増大, 尿量・尿中NaおよびK排泄量の増加がみられたが, 腎糸球体濾過量および尿中浸透圧は変化しなかった. 以上より, Nif, CDの抗高血圧作用の1つと考えられる利尿作用は, 尿細管からの水, 電解質物質の再吸収抑制に起因すると考えられる(裏面リスト1). 2.麻酔イヌで, 腎動脈内投与したNif, CDによる腎動脈内投与したアンジオテンシンII(AII)の腎血量減少反応の抑制は, 腎動脈内投与のノルエピネフリン, 腎交感神経刺激による腎血流量減少反応に対するそれより大きかった. また腎動脈内投与したNifによる腎血流量増大反応は, Nif投与直前の血漿レニン活性, 血漿AII濃度と正の相関を示した(裏面リスト2). 3.脊髄穿刺ラットにおいて, NifおよびCDは交感神経α_2受容体刺激薬B-HT920ならびにAIIにより拮抗された. パソプレシンによる昇圧反応はCDでのみ抑制され, BayK8644により拮抗された. 交感神経α_1受容体刺激薬メトキサミンの昇圧反応に対して両薬物は影響しなかった. 2, 3よりNif, CDの抗高血圧作用機序にAII, 交感神経α_2作動性の血管抵抗増加作用の抑制が示唆された. 4.自然発症高血圧ラットにおける圧-利尿曲線の右方偏位は, Nifにより糸球体濾過量, 尿中Na排泄量の増大を介して左方へ移動し, この調節機構におけるカルシウムの重要性が示唆された.
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