研究概要 |
1.心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の近位尿細管作用 ラット腎皮質のコラゲナーゼ処理により得られた尿細管懸濁液に各種基質を加えて好気的に反応させ, 新生された糖を測定した. ANPによりpyrurateとmalateからの糖新生は有意に上昇したが, glycoralからの糖新生は上昇を示さず, 明らかな基質特異性の存在が認められた. このANPの糖新生の上昇作用は鍵酵素であるphosphoenolpyruvate carboxykinaseの活性上昇を介して発現するものと推定された. 又, 反応液中のカルシウムイオンの存在がANP作用の発現に必須であることを確認した. ラット腎ネフロン内糖新生の局在は近位尿細管, とりわけその起始部と中間部に高い活性を示すことより, 同部位にANP作用の一つが存在することが明らかとなった. 2.ANPの遠位側尿細管に対する作用 上と同様の処置ラット腎からネフロン構成セグメントを単離し, DMEM培養液中で反応させて, 産生されたプロスタグランジンE_2(PGE_2)をRIA法で測定し, ANPの添加による反応を解析した. PGE_2のネフロン内産生部位は, 集合尿細管に高く, 糸球体やヘンレの係蹄上行脚, 遠位尿細管に中等度, 近位尿細管は低値を示した. 10^<-9>〜10^<-6>MのANPは皮質集合尿細管(CCT)でPGE_2産生を増させ, 髄質部集合管ではこの作用はなく, 10^<-6> MANPでのみ糸球体では増大を示した. 即ち, ANPのPGE_2産生の上昇はCCTに特有と考えられた. 3.ANPのセカンドメッセンジャー PGE_2産生増大を指標としたANPの作用は, 環状GMP(cGMP)で完全に代用されたが, cAMPは無作用であった. 又, このcGMPのPGE_2上昇はCCTで特有に認められたことからも, ANPのセカンドメッセンジャーはcGMPと考えられる.
|