研究概要 |
摘出イヌ腸間膜動脈を経壁電気刺激すると, 一過性の収縮反応が観察される. この反応はprazosinなどのα遮断薬. レセルピン処理などで完全に消失しなかったが, 交感神経からの伝達物質遊離を抑制するguanethidineで消失した. この結果は, イヌ腸間膜動脈の交感神経性収縮反応の一部が, α遮断薬に抵抗性であることを示唆した. 種々の薬物を用いて, このα遮断薬抵抗性反応に対する影響を検討したところ, P_2プリン受容体の脱感作を惹起するα,β-methyleneATPにより抑制されることが明らかとなった. そこで, 先にα,β-methyleneATPを処理し, その後prazosinを処理して交感神経性収縮反応に対する影響を検討したところ, 交感神経性反応は両薬物併用で完全に消失した. この結果より, イヌ腸間膜動脈の交感神経性反応はア ドレナリン作動性反応とプリン作動性反応より成ること, そして, 前者はprazosinで, 後者は, α,β-methyleneATEで選択的に抑制されることが明らかとなった. 次に, 交感神経性アドレナリンおよびプリン作動性反応の生体内分布をイヌにおいて調べた. その結果, 頚動脈,冠動脈,大腿動脈でアドレナリン作動性反応のみが, 脳底動脈および中大脳動脈ではプリン作動性反応のみが観察された. 腸間脈動脈の他に腸間脈動脈, 門脈,腎動脈および伏在静脈ではアドレプリンおよびプリン両作動性反応が観察された. この結果により, 交感神経性プリン作動性反応は生体内で広く機能しており, 重要な生理的機能を担っていることが示唆された.
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