研究概要 |
本研究では, 先ずラット心空筋細胞標本でα-アドレナリン受容体に選択性の高いα_1-アドレナリン受容体遮断薬[^3H]-プラゾシンを用いて結合実験を施行し, 更にこれらの心筋α-アドレナリン受容体の加令・甲状腺機能亢進状態・褐色細胞腫による生体内脱感作等の生理, 病態時における調節を検討した. 心筋α-アドレナリン受容体は加令に伴って現象したが, 若年・老年両群のラットいずれにおいても甲状腺ホルモン処理によりその受容体数が更に減少することが観察された. 即ち, 若年ラットでは58%, 老年ラットでは33%の減少が認められた. 分散分析より動物の年令及び, 甲状腺ホルモンの2つの要因が独立して, 心筋α_1アドレナリン受容体数を調節していることが明らかとなった. 次に, 褐色細胞腫ラットモデルを用い心筋のα受容体の脱感作現象を検討した. 心筋膜標本における[^3]-プラゾシンによって同定されたα_1受容体はその最大受容体結合数が褐色細胞腫ラット心筋において, 33%の低下を認めた. 一方, 飽和曲線から得られた解離定数(KD)には両群で差を認めなかった. 以上, 加令により心筋α_1アドレナリン受容体は減少すること, 更に甲状腺ホルモン処理により老年ラットにおいても若年ラット同様にその心筋α_1アドレナリン受容体が調節されることが判明した. また褐色細胞腫ラットの心筋を用いた研究より明らかなように, 心筋α_1アドレナリン受容体もその数の減少を受けることが明らかとなった. これらの研究より明らかなように心筋α_1アドレナリン受容体はβアドレナリン受容体と同様, 生体の各種生理・病態時にダイナミックに変動しうる結論された.
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