研究概要 |
代表的な細胞内カルシウム受容蛋白質であるカルモデュリンは, 平滑筋収縮反応において重要な生理的役割を果たしていると考えられているが, その主な作用機構はミオシン軽鎖リン酸化酵素の活性化である. そこで, まずカルモデュリンに作用する二種類の新しい薬物を見出した. 一つのHT-74で現在までに報告されているカルモデュリン阻害剤とカルモデュリン分子上の結合部位が異なることを明らかにした. さらに, この薬物はカルモデュリン関連分子であるトロポニンCやS100蛋白質にはほとんど結合せず, 新しい性質であるとともに, 今後の細胞内カルシウム受容蛋白質の比較研究に有用である. 他方はカルシウムチャンネルブロッカーであるベプリジルのカルモデュリンに対する結合をアイソトープラベルした薬物で解析した. その結果ベプリジルはカルモデュリンにカルシウム依存性に結合し, その解離定数は6.2μMであることが明らかとなった. 以上, 二種類のカルモデュリン阻害剤が新しく見出され, 今後分子レベルでの研究に使用できると思われる. さらに, カルモデュリン依存性ミオシン軽鎖リン酸化酵素と他の細胞内カルシウム情報伝達系との相互作用比較研究を試みた. すなわち, カルモデュリン系, カルシウム依存性プロテアーゼ(カルパイン)系, プロティンキナーゼC系の比較や相互の影響を解析した. そこで, カルシウム依存性プロテアーゼのカルモデュリン依存性ミオシン軽鎖リン酸化酵素に対する作用は, カルモデュリンの存在が大きく影響することを見出した. 一方プロティンキナーゼCとミオシン軽鎖リン酸化酵素はカルシウムイオンで活性化させることやミオシン軽鎖を基質とすることは共通しているが, 両酵素を識別できる阻害剤が新しく見出され, 今後これ等の選択的阻害剤を使用した分子レベル, 細胞レベルの実験により, それぞれの系の生理学的意義の解明が可能になると思われる.
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