研究概要 |
ラット灌流心臓において, 心筋内カテコラミン蓄積増大時, 心室細胞発生率の増大およびその持続時間が延長し, 一方心筋内カテコラミン蓄積減少時心室細胞発生率の減少およびその持続時間を短縮することを報告してきた. 本研究の目的は(1)ラット心筋内へのカテコラミン摂取増大が心拍数を増大するかどうか (2)心筋内蓄積カテコラミンがC-AMPおよび乳酸産生に影響するかどうか (3)実験的虚血が心筋内へのカテコラミン摂取機構に影響するかどうかなどを検討し, カテコラミンの心筋内作用及びカテコラミンの心筋内への摂取機構に影響する因子を明らかにすることにある. ラット灌流心臓においてCOMT阻害下心筋内イソプレナリン蓄積増大時, 心拍数は有意に増大した. 栄養液からグルコースを除去ならびに95%N_2および5%CO_2通気下, イソプレナリンを灌流時, 心筋内へのイソプレナリン摂取は有意に抑制された. COMT非阻害下イソプレナリン蓄積は, 少なくなかったが, C-AMP産生は有意に増加した. 一方, COMT阻害下イソプレナリン蓄積は増大したが, C-AMP産生は増加しなかった. 乳酸産生について, 心筋内イソプレナリン蓄積増大時, 乳酸産生は増大し, 一方, その蓄積抑制は, 乳酸産生を抑制した. また心筋内へのカテコラミン摂取は, 灌流栄養液からグルコースを除去, あるいは酸素を窒素に置換し通気した場合, それぞれ単独では殆ど影響しなかったが, 両者により抑制された. これらの結果より, ラット心筋内カテコラミン蓄積増大時の心室細動発生および心拍数増大には, アデニレートサイクレース系の抑制および解糖系の促進を伴うことが示された. さらに虚血時には, 心筋内へのカテコラミン摂取機構が抑制されるであろうことが示唆された.
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