研究概要 |
ボンベシンおよびCRF(corticotropin releasing factor)の関与する中枢ペプチド性胃機能抑制の機序とその脳内作用部位をウレタン麻酔ラットを用いて検討した. まず迷走神経を電気刺激(0.5mA, 3cycles/sec, 0.5msec)すると胃酸分泌および胃粘膜血流量は著しく増加した. なかでも, 胃酸分泌は60分後に刺激前の約13倍に達し, 150分後の実験終了時までほぼ一定のレベルに保たれた. そこで, この迷走神経性胃機能亢進に帯する反応を指標に, 得られた成績を纏めると次のようになる. 1)CRFの脳室内投与は, その用量(0.1, 0.3, 1.0および3.0nmole)に応じて胃機能を抑制した. この脳室内投与LRF(0.3nmole)の抑制効果は, さきに報告したボンベシンの場合と同様に, 両側大内臓神経の切除動物では出現しなかった. 2)ボンベシン0.3nmoleを視索前野, 前視床下部核および視床下部室傍核に微量注入すると, 胃酸分泌は有意に抑制された. しかし, 脊髄腔内投与では, 大量(1nmole)でも変化しなかった. 一方, CRFの場合にも視索前野内微量注入は有意に胃機能を抑制したが, その用量はボンベシンの場合より遥かに大きかった(0.1nmole). 3)視索前野, 前部視床下部核および, 視床下部室傍核を電気刺激(0.5mA, 10cycles/sec,2msec,10min)すると胃機能は有意に抑制された. 更に, これらの神経核の賦活を介して生じる抑制反応は両側大内臓神経の切除動物では現れなかった. 一方, 視索前野の外側部, 外側視床下野など他の脳部位の電気刺激では胃機能は変化しなかった. 以上の成績を纏めると, 視床下部前部領域に発したペプチド作動性(ボンベシンあるいはCRFによる)の情報は中枢性に交感神経-副腎髄質系の機能を賦活し, 胃に存在するアドレナリンーα受容体の活性化を介して胃機能を抑制するのであろう.
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