研究概要 |
1.サブスタンスK(ニューロキニンA)の中枢神経系での分布: 新しいタキキニン・ペプチドであるサブスタンスKの脳内分布を調べる目的で, まずサブスタンスKの特異的抗体の作製を試み, 成功した. 本抗体(FK05)を用い, RIA法で中枢神経系でのサブスタンKの分布を調べた結果, 黒質に最も密に分布していた. また, その一部は線条体に起源しており, 線条体-黒質系のサブスタンスK性神経の存在が明らかにされた. 延髄の孤束核は血圧調節にとって非常に重要な部位である. 本研究の測定の結果から, 孤束核にはサブスタンスKやサブスタンスPが密に分布していることが証明された. 現在, 孤束核でのこれらペプチドの動態と自律神経反射との関係について研究中である. 2.サブスタンスKの生理作用と受容体: サブスタンスKの生理的意義を見いだす目的で, 唾液分泌, 平滑筋収縮および中枢作用として, ラット脳の腹側被蓋野(VTA)へのペプチド微量投与による運動量への効果を調べ, サブスタンスPの場合と比較した. その結果, モルモット回腸やラットの唾液分泌作用ではサブスタンスPがより強い生理活性を示すが, ラットの十二指腸や輸精管平滑筋の収縮ではサブスタンスKが圧倒的に強い生理活性を持つことが明らかにされた. またVTAにサブスタンスKを投与するとラットの運動量が増加し, この作用はドーパミン受容体拮抗薬で抑制された. 現在, タキキニン・ペプチド受容体活性化から生理作用発現までの, 細胞内情報伝達系や, より選択性の強いタキキニン・ペプチド受容体作用薬の合成に関して研究中である.
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