研究概要 |
近年ATPがnoradrenaline(NA)と共に遊離する共神経伝達物質である可能性が示唆されているが, 反論もあって, これが事実として確立されるまでには, まだ多くの解決すべき点が残されている. 61年度は, 主にATP測定のための機器の整備および実験条件の確立のためのに費やされた. 次いで62年度は種々の神経刺激により遊離する内因性NAをHPLC-ECDで, また同じくATPをluciferin-luciferase反応により, それぞれ同一時間経過で測定し, 自律神経終末部におけるこれら物質の存在様式および遊離機構を明かにする目的で行なわれた. その結果, 電気刺激ないし高濃度KClによるNA遊離は外液Ca^<2+>に依存したexocytosisによる遊離であるのに対し, 細胞内Na^+濃度を高めるouabain(10^<-4>M)およびmonensin(10^<-5>M)の単独ないし同時投与によるNA遊離は外液Ca^<2+>に依存せず, 除神経や2,4-DNPなどで抑制されることから, ミトコンドリア由来の細胞内Ca^<2+>に依存した顆粒性貯蔵部位からの遊離である可能性が考えられる. 高濃度KClによるATP遊離はCa^<2+>除去および除神経により著しく減少し, α_1-受容体遮断薬によってほとんど影響されないので, 主に神経末端の顆粒性ATP貯蔵部位により引起こされると考えられる. 一方, ouabain+monensin投与によるATP遊離は除神経の影響を除いて, これらと相反する結果を示したので, ごく一部は神経性であるが, 主に神経終末部から遊離したNAによる平滑筋のα_1-受容体刺激の結果, 非神経性に引起こされるものと推定される. 高濃度KClによる両者の遊離をNA/ATP比で表わすと6.59になり, ouabain+monensinによるそれは0.22となった. 以上のことより交感神経終末部において脱分極刺激によりNAに比べ, ATPが優先的に遊離される顆粒と細胞内Na^+上昇によってATPよりNAが優先的に遊離される顆粒と2種類の異なるNA-ATP貯蔵部位存在の可能性が示唆された.
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