研究概要 |
我々の発見・構造決定したリボシルヒスチジンは, ヒスチジンに対するモノADPリボシル化により生合成されると考えられていた. そこで本生合成に関与するNAD^+グリコヒドロラーゼ, ヌクレオチドピロフォスファターゼの精製を行なった. 2つの酵素はいずれも膜結合型酵素であり, 前者はリパーゼにより, 後者はトリトンX100により可溶化した. いずれもイオン交換クロマトグラフィー, ゲル濾過法によりそれぞれ300倍, 200倍に精製した. これら精製酵素と, アルカリフォスファターゼ(5'-ヌクレオチダーゼの代用として)を用いてリボシルヒスチジン生合成系の再構成と確定に成功した. NAD^+グリコヒドロラーゼの基質特異性を調べたところ, ヒスチジンよりもヒスチジン含有ペプチド, ヒスチジンメチルエステル, ポリヒスチジンの方が良い基質となること, その転移反応がヒスタミンにより阻害を受けることが明らかとなった. NAD+^+グリコヒドロラーゼがタンパク質のヒスチジン残基を基質とすることも考えられたので, 放射性同位体で標識したNAD+^+を用いたタンパクへの転移を試みたが, 電気泳動・オートグラフィーにて有意のタンパクバンドを見い出すことができなかった. ヒト及びラットの妊娠経過に伴なうリボシルヒスチジンの尿中排泄パターンを調べたところヒト妊娠の中期(11週〜20週)と末期(33週〜40周)に著しい排泄増が見い出された. ラットにおいては末期のみであった. ラット臓器のヒスチジン及びNAD+^+グリコヒドロラーゼを検索した結果, ヒト中期の排泄増は基質ヒスチジン供給増によるもの, 末期の排泄増は胎児由来のもの(ラットでは特に胎児肝)と考えられた.
|