研究概要 |
本研究では, アンチザイム(AZ:ポリアミンで誘導されODCに結合して不活化する蛋白質)ならびにアンチザイムインヒビター(AI:ODC-AZ複合体に作用して活性ODCを遊離する蛋白質)とODC分解の関連性を明らかにしようとした. 1.蛋白分解系変異細胞を用いて検討し, ODCの速い分解系にはリソゾーム及びユビキチン依存性蛋白分解系は重要ではないことが明らかになった. また, HTCとそのODC安定化変異株HMO_A細胞ではODC蛋白には差がないことが知られていたが, 今回, AZ蛋白にも差がないことを確認した. 従ってHMO_A細胞のODC安定化の原因はODCに特異的な分解系自体にあると推定された. 2.従来AZの存在が否定されていたマウス腎に於て, AZのポリアミンによる誘導ならびに生理的条件下でのAZ-ODC複合体の存在を証明した. また, 雌雄のマウスとアンドロゲン投与雌マウスを用いてODCの分解速度とAZ/ODC比の間に相関性があることを確認し, AZの存在と役割の普遍性が支持された. 3.AIを部分精製して, その性質がODCに極めて類似していることを明らかにした. しかし, 抗ODC抗体との極めて低い反応性やinvivoにおける動態からAIはODCの分解産物ではなくODC分解の調節因子であると推定された. 特にラット肝, 心に於けるODC誘導時のODC, AZ, AIの変動の相互関係から, AIは誘導初期にAZを不活化してODCを安定化し, ODC活性の上昇を増幅し, AZはODCの減少時にODC分解を加速してODCの低下を増幅し, 触媒量のAIとAZが協同してODCの迅速な代謝回転を可能にすると示唆された. 4.部分精製したAIでマウスを免疫しモノクローナル抗体を得た. 今後, 抗体を利用してAIを精製する一方, HTC, HMO_A細胞の差やAZとAIの効果を特異性の指標として, 無細胞抽出液によるODC分解系の確立を試みたい.
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