研究概要 |
本研究では, 初代培養ラット肝細胞を用いて, 血中の主要蛋白質であるハプトグロビン, 補体成分C3およびフィブリノーゲンの生合成と細胞内輸送過程における修飾について検討した結果, 以下の知見を得た. 1.ハプトグロビンの生合成と修飾. 1)ハプトグロビンは細胞内でまず分子量42,000の單一ペプチド鎖前駆体として合成され, 小胞体内で速やかにα鎖(9,500)とβ鎖(33, 000)に切断されることがわかった. β鎖には糖鎖が存在し, 細胞内輸送過程で高マンノース型から複合型糖鎖に変換され分子量は36,000になる. 2)糖鎖構造解析の結果, β鎖には2分枝鎖および3分枝鎖の複合型糖鎖が各2本, 合計4本存在することがわかった. 2.補体成分C3の生合成と修飾. 1)C3は細胞内でまず分子量180,000の單一ペプチド鎖前駆体として合成されるが, ゴルジ装置トランス領域でα鎖(115,000)とβ鎖(65,000)に切断された後分泌される. 2)C3の糖鎖はα鎖のみに存在し, 2分枝鎖および3分枝鎖の複合型糖鎖各1本, および高マンノース型糖鎖1本の合計3本の糖鎖がつく. 3.フィブリノーゲンの生合成と修飾. 1)フィブリノーゲンの各サブユニット(Aα, Bβ, およびγ鎖)の合成速度を検討した結果, Aα鎖のみが他の2者より有意に遅く, フィブリノーゲン分子のアセンブリーにおける律速因子になっている. 2)ラットフィブリノーゲンでは, γ鎖の約10%を占める変異分子種γB鎖が硫酸化されることがわかった. その硫酸化部位はC末端から2番目のチロシンであり, 分泌直前のゴルジ装置トランス領域で起る.
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