研究概要 |
肝虚血とそれに続く血流再開による組織細胞障害は, 虚血時よりも血流再開後の生体膜過酸化脂質生成促進に起因する. その結果, ミトコンドリア機能障害, ATP再合成障害がおこり, Ca^<2+>ホメオスターシスの障害を結果し, このような過程がさらに生体膜過酸化反応を促進する悪循環をきし, 細胞障害から臓器機能障害へ続き, 生体の死に至ることを明らかにしてきた. これに対し, 抗酸化剤であるCoQ_<10>, α-トコフェロール(α-Toc), 還元型グルタチオン(GSH)が虚血-血流再開やエンドトキシンショックによる細胞障害を保護する可能性が考えられる以下の結果を得た. 1.CoQ_<10>と同様にα-Toc前投与は, ラット肝虚血-血流再開モデル実験系の肝障害を保護し, ラット生存率を上昇させた. エンドトキシンショックの病態も一部虚血肝障害で説明でき, これらの抗酸化剤の投与によりエンドトキシン血症マウスの生存率を上昇させた. 2.ラット肝虚血-血流再開モデル実験で肝組織GSHペルオキシダーゼ, GSH還元酵素両活性に全く変化がなく, 虚血時および血流再開後にGSHが減少するが酸化型グルタチオン(GSSG)の相当量の増加がないこと, CoQ_<10>およびα-Toc前投与が血流再開後のGSH低下を抑制したことより, GSHそのものが細胞内で保護作用を示すと考えられる. エンドトキシン投与マウスの肝組織GSHも, 肝の過酸化脂質増量時に減少し, この減少はCoQ_<10>, α-Toc投与により抑制された. 3.ラット肝虚血-血流再開モデル実験の結果, GSH前駆体N-アセチルシスティンまたはGSH投与は, ラット肝のGSH濃度を有意に増加させ, 虚血後の生存率を対照10%から40%に上昇させた. 4.ラット同所性温阻血肝(30分)移植の生存率0%を, CoQ_<10>前投与は移植後の生存率を50%へ上昇させ, 肝虚血-血流再開モデルで得た結果の実験的肝移植への応用に初めて成功した.
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