研究概要 |
[目的]分泌の機序を知るためには分泌される分子がいかなる形で存在するかが最も基本的な問題である. これまでペプチドホルモンは全て分泌顆粒内にのみ存在すると信じられてきた. Ca代謝の要である副甲状腺ホルモン(PTH)は主細胞内に存在するが分泌顆粒のきわめて少ないことで知られている. 我々は光顕レベルでの免疫組織化学法と電顕観察とを照合することによって, PTHは分泌顆粒のみでなく細胞質中にかなりの濃度で存在するという知見を得ている. そこで本研究は抗原性保持の最も良い酵素抗体法と構造維持の最もよい金フロイド法の両者の免疫電顕法を用いてPTHの細胞内存在様式を明らかにすることを目的とする. [材料・方法]ラット副甲状腺をPLPにより環流固定し酵素抗体法により免疫電顕観察を行なった. 又, 2%glutaraldehyde含有固定液で環流固定し金フロイド法により免疫電顕観察を行なった. [結果]酵素抗体法では分泌顆粒上に免疫染色陽性であったが分泌顆粒以外の細胞質中にもかなりの陽性所見を得た. ここに用いた環流固定法は比較的構造破壊は少ないと考えられるので細胞質中に抗原が漏出したとするよりは抗原がそこに存在すると考えられる. しかも金フロイド法による結果では細胞質中に存在することが確認された. [考察]酵素抗体法及び金フロイド法のいずれによっても細胞質中に陽性であるという結果は細胞質中PTHが存在することを示唆した. 化学伝達物質であるアセチルコリンはvesicle以外にも細胞質中に多量に存在することが確かめられている. PTHの細胞質内存在はこれと類似した現象と考えられる. PTHは細胞外のCa^<++>濃度の多寡に敏感に反応して分泌されるので, 細胞内外のCa^<++>濃度の変化は非常に重要である. 次はIndo-1を用いて副甲状腺細胞内外のCa^<++>濃度を測定する.
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