研究概要 |
Inomotile cilia症候群に代表される先天的線毛異常に関しては、臨床上の所見の他に、線毛運動の有無・超微形態上の異常所見等により診断されている。電顕上の所見として、dynein armの欠損の他にも種々の異常が見い出されている。我々はdynein armやprotofilamentの観察に有利なタシニン酸固定法を行い呼吸器線毛の観察を続けているが、機能面での解析のためには、免疫組織化学的な手技の導入が必要である。 1.日本における先天的異常線毛症例 1975年の最初の報告以来、欧米では多数の報告がなされている。80年に入り、日本人症例も見い出され、現在30数例の報告がある。我々も5例を見い出している。4例の小児科例(男1,女3,内1例のKartagener症候群)と1例の成人男子例で、精子の検索も行っている。主な異常所見は、dyneinarmの欠損であるが、男児例では、armがあり運動性もあるが、形態異常をcentral pairに見い出した新しい型と考えられるものもある。微小管を構成するprotofilsmentの数は、人の場合、13個であるが、極めて稀に17個のものも見い出され、nexin linkの欠損を思わせるものも、混在していた。 2.免疫電子顕微鏡観察 線毛を構成する微小管tubulinの免疫染色には、グルタール固定材料の切片上でのprotein A-goldによる反応で、かなりの成績を得ており、この方法で、α,B tubulinの配例,基底小体のtripletから線毛部のdoubletへの変換,bosalplateにおけるcentral pairの出現機序等に関し観察を続けている。DyneinやMAPS等の機能蛋白の局在観察のために、PLP固定による検討を行い、微細構造の保持に関して満足すべき結果を得ている。現在、固定材料に使用できる抗dynein抗体を入手不可であり、今後、これらの抗体作製にも努力する必要がある。
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