研究概要 |
われわれは非近交系Long Evansラットより毛色の異なる2系の近交系ラット(LECとLEA)を分離した. 核系を弟妹交配で継代したところ, 23代以降のLECラットに限って生後4-5カ付になると突然重篤な黄疸ビリルビン尿貧血・体重減少を停止, 又血清中の直接・間接ビリルビン値および血清トランスアミナーゼ(GOT,GPT)の急激な上昇をきたし発症後2週間以内に死亡した. この病変ラットは病理組織学的には肝萎縮と肝組織全体に多数の壊死巣が認められ, 典型的な肝炎の所見を示していた. 次にLECラットを免疫病理学的に検索したところ複合免疫不全の合併がみられた. すわち肝炎発症以前のLECラットとLEAラットの胸腺, 及び脾臓の重量を比較したところLECラットで有意に低値を示した. またLECラットの血清中のIgGレベルは生後4週令以降低値を持続し, SRBCに対する抗体産生細胞数(IgMおよびIgG)もLEAに比して有意に低下していた. また脾細胞のPHAおよびCon Aに対する幼若化反応, およびSRGCにいする遅延型過敏反応もLECラットで有意に低下しており, T細胞機能不全も認められた. 一方, 腹腔マクロファージの細胞抑制能はLECラットで著名に上昇していた. さらに, LECとLEAの交雑系ラットを用いた検索ではIgGレベルの比較的高いF_1雑種では肝炎の発症は全くみられず, F_2雑種およびback-crossラットの中でIgGサベルの低値のものに肝炎の発症率が高かった. 以上の結果はLECラットでは肝炎発症以前より複合免疫不全を合併しており, 一方マクロファージは非特異的に活性化されていることを示している. これらの特異的, 非特異的免疫異常がLECラットの肝炎発症およびその予後に密接な関連を有しているものと推測しさらに検討を重ねている.
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