研究概要 |
DNA修復能を病理学的に把握することはオートラジオグラフを使用する方法で可能に成りつつあるが, 病的組織に於けるその解析は大変困難である. 今回の研究ではin vivo条件によるDNA修復能と細胞種との相関をN-2-fluorenylacetamideの16週間投与せるACI/Nラットを使用し, 3ty-thymidlneとhydroxyureaの複数回投与によるArefelliniの方法に従い, MNVの投与に対する肝前癌病変細胞に於けるDNA修復能の解析を試みた. しかしhydroxyureaの投与にもかかわらず, S期細胞の出現の多すぎに過ぎ, S期細胞の少ない非変異増殖巣にて不定期DNA合成と考えられる現象を認めたが, 同合成の固定と同合成の変異増殖間の差異の判定は困難であった. 今回の研究により膀胱発癌モデルでの異形成上皮において明瞭なDNA修復能の低下を明らかにした. 本研究はBBN投与ラットより摘出した膀胱のMNNGと^3H Thymicleine存在下での器官培養にて行われ, BBN投与ラット膀胱ではMNNGに対する不定期DNA合成はBBN投与期間が増すにつれ減少した. 本結果はinvitro実験に於けるラット前癌性時細胞に於ける発癌物質に対するDNA修復能の低下の事実と共に前癌細胞のDNA修復能の低下を明らかにするものであり, 前癌細胞の運命に重要な意味を与えると考えられる. 本研究では人肝癌の前駆病変と考えられる異形成細胞C肝硬変等に出現)による前段階として正常肝細胞に於けるDNA修復能を検討した. 人肝細胞は転移性肝癌等の患者よりStrom等の方法を改良して行われた. これら細胞のdinitropyrene等の化学物質に対応する不定期DNA合成はラットにみられるものに類似したが, 一部の化学物質ではDNA不定期合成は異なった. この様な研究により得られた方法論と結果は今後の人肝前癌病変のDNA修復能の測定の足がかりになると考えられる.
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