研究概要 |
(1)CB6F_1ヌードマウスに親系B6マウスの脾細胞を移入することにより致死性のGVH病が発症する. この場合donorT細胞のLyt-2或いはL3T4陽性いずれのsubsetが主要なeffcctor細胞であるかを, 抗体と補体によるdonor脾細胞の処理による方法或いは脾細胞移入後に抗Lyt-2或いは抗L3T4抗体をrecipientヌードマウスに注入する方法により解析した. その結果致死性GVH病発症にはLyt-2とL3T4陽性細胞の両者の協調が必要であるが主たるeffcctorT細胞はL3T4陽性のsubsetであり, その作用は弱いがLyt-2陽性細胞もeffcctor細胞になり得ることがわかった. (2)またCB6F1ヌードマウスに誘導されるGVH病の重症度はdonorのH-2haplotypeに相関せず, 非H-2遺伝子群にむしろ相関するものであった. 即ちCB6F1ヌードマウスにBALB背景遺伝子〔BALB/C(H-2^α),BALB・B(H-2^b)を有するdonor脾細胞を移入した場合致死率は低く, 他の親系であるB6背景遺伝子〔B6(H-2^α),B10・D2(H-2^b)〕を有するdonor脾細胞を移入した場合, 致死率は著明に高値を示した. この事は非H-2遺伝子群中にはH-2の差異によって生ずるGVH病の重症度は何等かの機序により調節する遺伝子の存在を示唆している. (3)CB6F1ヌードマウスに非H-2のみ異なるdonor脾細胞を移入した場合にdonorT細胞は一過性の非致死性GVH反応を起すのみで, 長期にわたり排除されることなくヌードマウスに残存するものがある. 一方H-2の異なるdonorT細胞のなかには致死性のGVH病を誘導するにもかかわらず, 死を免れた個体ではdonorT細胞は完全に排除されていた. またF1ヌードマウスにあらかじめF_1T細胞を移入しておくことにより親系統脾細胞による致死性のGVH病を完全に回避できるが, このことはF1の親T細胞に対するT細胞性免疫反応が重要であることを示している. 以上の如くヌードマウスをrecipientに用いる我々の実験系はdonorT細胞の解析のみならず, GVH病を修飾するrecipient側の因子を解析する系としても有効である.
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